広島柳生会

正傳新陰流 広島柳生会

剣道の修業の一環として新陰流・制剛流抜刀術を伝承する広島柳生会の日常の稽古風景や出来事を掲載する。

11月第二土曜日稽古会

令和五年11月11日、11月第二土曜日稽古会を行いました。この日は、一か月のアメリカ出張を終えた永原君が出向いて参りました。体調管理に気を配り、元気に戻って参りました。一遍に冬に成った様な寒い一日でありました。

剣道着に着替えての一人遣いを観ていると剣道形の足捌きを試しておりました。ブログで齋藤君の取組を知り、早速実践している様でした。先ずは自身の体を真っ直ぐに運べねば剣は始まりません。良き事であります。

木刀での打込み稽古では、打ち其の物もそして身体の運びに精度を求めさせました。決して右手に力みが入らぬ様に、そして体を何処までも真っ直ぐに運べるように・・・それが中々に難しい・・・彼の場合は進むほどに左に寄って仕舞います。右足前の摺足での送り足の難しさです。自得して貰うしか方法はありません。足捌きが良く成れば打ちも良くなります。足捌きに気を配りながらの打込で良き打ちが出た処で打込は終了としました。乾いた音と心地よい手応えが双方の手の内に残っておりました。

兵法での何気ない文の斬り・・・これが剣の振りの基本であります。決して人中路を外れる事の無いように・・・ユッタリと振る難しさであります。振る・・・なぞっては駄目であります。捷径の相懸けからの摺り落とし・・・左手の捌きの精度を求めました。

真剣での抜刀では立合を行いました。特に基本刀法は念入りに行いました。今回は順の袈裟斬りに難儀しておりました。これも基本稽古の際の右手の僅かな力みが起因しております。本人も判っている事であります。力みを取り去るべく必死に振り込んでおりました。振り込みしかありません。片手打ちの直刀は良い振りでありました。

剣道形は三本目の突きに課題を抱えております。新陰流とは違う突き方・・・遣い分けねば成りません。どちらも必要です。そして摺り揚げ技・・・。

稽古の締めは、防具を着けての基本打込と地稽古であります。アメリカ出張疲れを洗い流す如く、体中から汗として流しつくして貰いました。良く成って来た基本打込も自由に打ち合う地稽古では、どうしても乱れて仕舞います。打つ太刀は守る太刀にならねば本当の打ちとは言えません。打たれながら自身の至らなさを再認識しながら正して行きます。師弟同行が何処までも続きます。

稽古後には、剣道七段挑戦者からこの日の名古屋での昇段試験に合格した報告が飛び込んで参りました。私を頼って来て二年・・・直伝稽古の成果が遂に実を結びました。喜ばしい事であります。

日記

 

11月第一日曜日稽古会・・・剣道特別稽古そして直伝稽古

令和五年11月5日、昨日に引続き日曜日稽古会を行いました。これまた昨日に引続き少し暑さが戻った日中でありました。

前半は剣道七段挑戦者の特別稽古としました。先ずは剣道形を打ち合いました。日々の稽古の中での課題をその都度伝えてありますので、その事を確りと認識しながら気を張り、挑んで参りました。太刀七本の中で通して呼吸法を継続する事はまだできおりませんが、何とかそう仕様と奮闘しておりました。今回は五本目で息が尽きておりました。

六本目の摺り揚げ小手は今までで一番の手応えを醸し出しておりました。打太刀の手の内にも心地よい手応えが伝わっておりました。本日の課題は、小太刀一本目の受け流しでありましょう。どうしても前で捌こうとして小太刀の捌きが下がって仕舞います。小太刀の中にもっと自身の身が入る事を求めました。

防具を着けての地稽古では、足の状態も考慮して基本稽古を行いました。形稽古で身に付けつつある摺り揚げ技を重点的に行いました。それは如いてはそれは、元立の打込み稽古でもありました。七段挑戦者の求める儘の稽古に応じました。剣道特別稽古の終盤に齋藤君が出向いて参りました。

この日の稽古が彼に取りまして、出航前の最後の稽古と成ります。時を惜しむ様に一人遣いに精を出す様子を観ておりますと踏込みを伴った振りを行い、次に今回の直伝稽古の阿吽の呼吸でのテーマとなりました。摺足での体の運び・・・それも剣道形で行う、大きく三歩でて小さく五歩で元の位置に戻ると言う足法を遣り始めました。

平生の一人遣いの際の場の遣い方から剣道形を行う場の遣い方に位置を変えて・・・しかし、立ち位置が打太刀(師の位)位置に立っている事は、最後まで気が付かぬ齋藤君でありました。新陰流と混同してしまっております。剣道形と新陰流の立ち位置は逆であります。
しかしながら夢中で無心に剣道形の運法を自身の感性で繰り返す様子をこの日は尊重する事とし、師の位で傍で見届ける事としました。背筋を通す事は、乱れた時には指摘しました。腰の上下動は極力少なく・・・摺足・・・浮かぬ様に・・・只自分の体を真っ直ぐ運ぶだけが・・・精度を求めれば果てしなく難しい・・・そしてこの捌きが打ちに繋がる・・・その事教えてもらい、この単純な動きの中にある剣の根幹に関わる物を求めて、無心に必死に取組む・・・気が付けば二時間近くがたっておりました。

齋藤君にとっての出向前の稽古は、終了しました。・・・良き稽古でありました。この様な単調な稽古に必死に取組む弟子の姿は・・・頼もしく感じました。

日記

 

 

11月最初の土曜日稽古会

令和五年11月4日、11月第一土曜日稽古会を行いました。この日を入れて海上勤務まで後二回の稽古と成る齋藤君が時間を惜しむ様に出向いて参りました。秋と言うには少し気温の高い一日でありました。

海上勤務の間のこの一か月の稽古は、あくまでも基本の中に有る重要な点・・・剣の極意と言っても良い、根幹に関わる点を重点的に身に付けるべく、繰り返し稽古を行いました。

先ずは、ハセセであります。その中のセ・・・誰でも知っていて中々に身に付かぬ事であります。先ずは座って、そして立って、更に動きの中で崩れぬ様に・・・これが出来ねば、真の打ちは決して出来ません。

その為の足法・・・足捌き、体捌き・・・先ずは、剣道形の中で言われている、大きく三歩体を進めて、小さく五歩で下がる・・・それを摺足で行う。誰でも知っていて、出来ると思っていても、まず出来ている者は無い。

此の重要性を明かし、実践させました。言われて初めて気づく難しさ・・・困惑しながら繰り返す齋藤君でありました。この足捌きが、実は地稽古での面打ちに繋がります。これが出来ねば真の面打ちは出来ません。

基本打込、兵法、剣道形、真剣での抜刀、そして防具を着けての基本打込、地稽古・・・全てを先ずは体を正しく運ぶ事を確り認識して遣い合いました。

何処までも真の一本を求めての師弟同行であります。

10月最後の第五日曜日稽古会

令和五年10月29日、10月最後の日曜日稽古会を行いました。昨日に引続き齋藤君が出向いて参りました。海上勤務迄の後三回の稽古であります。この日も根本を求めての直伝稽古に励みました。特にこの日は、根本、根幹に関わる事をさらに深く行いました。基本動作の中に込められているその術理を一段深める直伝を行いました。

只々一見すると単純な繰り返し稽古でしか身に付かない事柄を確りと認識し、取組み続ける事を諭しました。無論直弟子達は判っており、確りと取組んではおりますが、その奥を知る事で更に熱を持って取り組む様に・・・。剣の真の修行に奇を衒ったり、手順だけを追う事は有り得ません。真の一本を求めての果てしない修行を行うばかりであります。

一人遣いの素振り(体の移動、捌きを伴った)で振り抜き、兵法(形稽古)で相手の働きに連れ従って勝ちを取る事を学び、真剣を振り抜き・・・阿吽の呼吸で遣い合いました。

日記

10月第四土曜日稽古会・・・四段授与

令和五年10月28日、10月第四土曜日稽古会を行いました。11月初旬には海上勤務に戻る齋藤君が、時間を惜しむ様にこの日も稽古に出向いて参りました。道場に入るなり先ずは、一人遣いに勤しむ彼でありました。近々の課題であり、剣士としては永遠の求める物である背筋の通り、人中路の構築を求めての振りを繰り返しておりました。生涯追い求めて行く、一見単純極まりない素振りの中に、得も言われぬ深みを感じながら、尊い汗を流しておりました。

昨年来の一門一致の感想であります、彼の上達期に入った証としての四段位授与を行いました。年があければ入門10年を迎える事に成る良き時期であると感じております。

180センチ80キロを超す体躯が心なしか逞しく感じる昨今であります。弟子の上達を感じる・・・師の位に取ってこれ程嬉しい事はありません。ますますの真の上達を期待しております。

四段として恥ずかしくない振りを求めて、更なる上達を求めました。基本の振りにおいて時として上体が後傾する時があります。これでは真の鋭い振りは出来かねます。背筋を通し、振り、動きの中でもその姿勢が崩れぬ様に、更なる進化を求めました。

基本打込、兵法、真剣での抜刀、防具を着けての地稽古と全てにおいて根幹と成る課題を意識させ、遣わせました。

日記

西宮、剣道高段者三人稽古会の為に遠征

令和五年10月25日、二か月振りに西宮剣道高段者三人稽古会に出向きました。ここ数カ月はメンバーのお一人の足の回復具合を観ながらの稽古会と成っており、二か月に一回のペースで行っております。無論、ご本人も無理をしてでも毎月の稽古をお望みですが、自重をお願いしております。年齢もあり、無理は禁物です。息の長い稽古会を皆が願っております。しかしながら、無理をしてでも稽古をお願いしたいと言うお気持ちだけは、有難く頂戴したいと思っております。

朝8時過ぎに自宅を出立する時には、車の暖房をつける程の気温に成っておりましたが、昼過ぎに兵庫県に入る頃には、冷房に切り替わっておりました。寒暖差の激しい一日でありました。

稽古の始まりは、剣道形からであります。お二人の相手をしながら先ずはお二人共通の課題であります、六本目の小手打ちに対する応じ技を摺り揚げで無く、返し技で対応しました。打太刀の時のお二人の小手打ちは地稽古時に使われるやや斜打ちの傾向があり、摺り揚げに成り得ません。その様な傾向の打ちに応じた返し小手での(カチーン)と言う甲高い音にお二人とも少しビックリし、自身の小手打ちの太刀筋が乱れている事に気がついた様でありました。はじめてその事を明かしました。お二人共に少し考え込まれておりました。ご自身が仕太刀をしている時には、気持ちよく摺り揚げが出来ている意味を理解した様であります。打太刀の大切さであり、師の位の意味であります。

その様な事もあり、少し形稽古後の検証の時間が押してしまい、地稽古の時間が平生よりは少なく成って仕舞いました。しかしながらそれも良しであります。

あとで検証してみれば、何時もより地稽古の時間が少ない・・・という思いは、やはり稽古心境に影響しない訳がない・・・思い返せば、無心に近い会心の面打ちは、お二人相手の稽古で前半に出て仕舞い、終盤以降の集中がすこし間持の悪い状態と成って仕舞いました。

もっと地稽古をしたい・・・しかし、残りの時間は迫っている・・・これでは真の集中は、出来かねます。何時もは彼我共に会心の一本で終わる地稽古も今回は時間切れで終わって仕舞い、少し物足りなさが残りました。これは、今後の課題であります。

会心の一本が最後に決まらなくとも、心おきない攻め合いは遣りきった・・・これを目指します。

日記

 

10月、第四日曜日稽古会・・・剣道特別稽古そして直伝稽古

令和五年10月22日、10月第四日曜日稽古会を行いました。この日は、前半を剣道七段挑戦者の為の特別稽古を行い、後半は齋藤君への直伝稽古としました。

昨日に引き続き、心地良い正しく秋晴れの一日でありました。先ずは、剣道特別稽古で日本剣道形を一本勝負の気迫で打合いました。回を重ねるたびに、合気が深まり、技の出来不出来は毎回なにがしか有りはしますが、それ以上に呼吸法を一つとし、太刀七本、小太刀三本を遣い切る事の何と充実感を共有できる事か。至福の時間であります。心地よい摺り揚げ小手の仕太刀の遣いっぷりに喜びを共有した打太刀、仕太刀でありました。

防具を着けての地稽古では、先ずは確りとした正面打ちを求めて、何度も打込みをして貰いました。何十年剣道をやろうともこれが全てと言って良いものです。いくつに成っても高段位に成ろうとも、真面を求めて只只管に振り、打込みを繰り返すのが、真の剣を求めると言う事です。武道において奇を衒う事など有り得ません。地道な一見単調と思える修業でしか真の剣は身に付きません。

その点を考えれば、9月に栃木で参加しました抜刀道が今後武道として確立されるかは、一刀両断、順逆の袈裟斬りに真の刀法を求めて精進を重ねる事が出来るか否かに懸っていると感じました。曲斬りなどを認めれば・・・それ迄でありましょう。曲斬り・・・所詮、余興、かくし芸であります。断じて武道とは成り得ません。

その後の地稽古では、ややもすると斜になりやすい面打ちに修正を加え、真面を求めての攻め合い、打ち合いを行いました。

後半の直伝稽古は、地稽古は行わずに、木刀による基本打込、兵法、剣道形、真剣での抜刀を行いました。無論、前日に指摘し、正した背筋が通った正しい姿勢を意識させ、全てを遣わせました。夢中に振っていると背中が曲がる・・・ついた悪癖を捨て去る直伝稽古が続きました。

しかし・・・確かに確実に上達をみせている齋藤君に、その証として四段を伝授する事にしました。次回出航前に渡せればと考えております。

日記