令和二年4月24日、我々の刀剣師匠へのお参りに出向きました。この日は、二か月の海上勤務を終えて久々に呉に戻ってきた齋藤君と共にご自宅にお邪魔いたしました。
彼が海上勤務に出向して一か月後に92歳の人生を終えられた我らの刀剣の師匠でありました。齋藤君にとりましても驚きの出来事でありましょう。いまだご自宅に安置されております師匠のお骨の前で静かに深くお参りする齋藤君でありました。小生と共に刀剣研磨・・・刀の研ぎを教えて頂いた日々の思い出が走馬灯の様に彼の脳裏を駆け巡っている様でありました。
二か月ぶりに呉に戻ってみれば、世の中コロナ騒動で周りの状況が一変しており、しかも刀の師匠が、旅立っていた・・・彼にすれば浦島太郎の気持ちでありましょう。呆然としながらも師匠にお別れをし、これまでの感謝を述べてご自宅を後にしました。
我らの刀の師匠は、15歳で刀鍛冶に弟子入りし、戦前戦中戦後と77年に及ぶ永き人生を刀一筋に捧げて生き抜いた人生でありました。その刀の生き字引と言って良い師匠から刀全般の薫陶を受ける事が出来ました事は、我ら一門にとりましてはこれに勝る幸いはありません。ただただ感謝しかりません。
ここ三年は、店に出ることも叶わず養生に専念した日々でありましたが、亡くなる前日にご家族人に(自分の人生に悔いはない)と淡々と申されていたとのことであります。見事なる一生でありました。生前は、廣川君を目にかけてくれておりました。今頃はあちらの世界で仲良く刀談義に花を咲かせている事でありましょう。
今は、ただただご冥福をお祈りするばかりであります。
合掌!