広島柳生会

正傳新陰流 広島柳生会

剣道の修業の一環として新陰流・制剛流抜刀術を伝承する広島柳生会の日常の稽古風景や出来事を掲載する。

五月ゴールデンウイーク合宿

五月のゴールデンウイークを利用しての合宿を行いました。例年この時期はお休みとしておりましたが博多及び新潟からの出稽古の希望があり初めて執り行いました。初夏の様な日差しの中博多から土居君が防具を携え勇躍乗り込んで参りました。


彼との地稽古は久しぶりですので楽しみは最後に取っておき、まずは皆の前での剣道形から始めました。かなり形においての手の内は良くなってきておりました。しかし細かな剣遣い、体の崩れてはいけないところの崩れ、腕の返しのやや柔軟さを欠いた所と根本的な課題は前々から指摘している通り解決の途上と言ったとこでしょう。しかし最も大切な気の張りその質はかなり良くなってきております。


全員での基本稽古に入りまして土居君には初めて元立を行って貰いました。元立とはいえあくまで自身の相懸けと体捌きを伴なった打ち留めの稽古に主眼を置き、打込む者が伸び伸びと剣を遣える様に間を取る事を要求し繰返し全員に懸かって貰いました。その縦気味の相懸けその足調子に人の事どころではなく、ままならぬ足音をたて悪戦苦闘の様子で有りました。今までは何気なく懸かるだけであったのが自身が元に立ち行って見るとこんなにまま成らぬ物であるのかとつくづく感じた事で有りましょう。


兵法はまず三学、八勢、中段を懸かって貰い、その後昨年来取組んで貰っている打太刀の懸かり稽古を行って貰いました。合撃の使太刀とは違う難しさに少々途方にくれつつ必死に取組んでおりました。途中で気が付いた事ですが藤中、島田両者に対する打込みと三崎君に対するそれとが明らかに違っていると言う事です。結果的には両者への打太刀としての合撃が、彼我との調子においてそれなりに折り合っています。少々竹刀が当たっても心配ない者に対する打ちの方が彼我との関係において合撃らしくなっております。当ててしまっては三ヶ月殺しを喰らう三崎君には如何しても手加減してしまいかえって互いの太刀筋がチグハグになっています。これが剣の面白い処です。互いに本気に遣い合った方が技量未熟と言えども良い結果となると言う事です。試勢法の連続遣いで疲労困憊の様子を呈してきましたので、一服の茶で間をとり試し斬りへと移行しました。


土居君には手ほどきをしておりませんでしたので今回はじめて行う事としました。彼は友人の好意によりあろう事か長船での無謀な試し斬りを一度経験してはおりますが、一度正式に手解きをしておかねばと思っておりました。案の定一本目は何とか斬れはしましたがそれはほとんど打撃と言って良いもので思わず刀(関の兼定)の心配をしてしまいました。手本を示し(両手、片手)二三本連続で斬って貰いましたが、一本良い剣先の走りがあり数メートル飛んでいた巻藁の切れ端が確かに一本は台の近くにぽとりと落ちました。この時の手の内の感覚が本日の一番の収穫かもしれません。


試し斬りで一間入れた後は中段の打太刀に挑戦して貰い、抜刀を抜き合い、新陰流の稽古を終えました。そして最後は皆の前で防具を付けて小生との地稽古を行い、今まで博多の地にて磨いてきた剣技(人格も含む)を見せて貰いました。今までは余人を交えずの地稽古でありましたが今回初めて会員の前にてつかって貰いましたが、人に見られる事による気持ちのぶれ、意気込みの空回り等、種〃の重圧が今回は良き方向にはいかず乱れた稽古となってしまいました。今回の彼は新陰流の大眼目で有ります遣い合うと言う事ではなく争気を持って対立を挑んできたもので有りました。形であれ地稽古であれお願いすると言う真摯な態度でなければ良い稽古にはなりえません。今回初めて稽古後に言葉をそえ少々叱責する事になりましたが彼の今後の良薬となってくれると信じております。


稽古後は彼の好物の蕎麦をすすりながら剣談にはなを咲かせ明日の稽古に思いを馳せ散会としました。