広島柳生会

正傳新陰流 広島柳生会

剣道の修業の一環として新陰流・制剛流抜刀術を伝承する広島柳生会の日常の稽古風景や出来事を掲載する。

三度目の復帰

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四月第三日曜日稽古会を行いました。昨日の激しい雨がすっかり上がり、裏山の緑も瑞々しいその色を一際際立たせておりました。まるで、苦しい副作用に立ち向かい、三度目の復帰を果たした者を優しく迎え入れるように。退院後五日にして、好美君が道場に稽古に帰って参りました。第三クールの戦いは予想以上に苦しいものであり、身の置き場のない不快感に苛まれた八日間でありました。本日も未だ抜け切らぬ不定愁訴の状態でありましょうが、先ずは何を置いても剣の神様に道場に三度目の戦いを終えた報告に出向いて参りました。その手には確りと当会の御揃いの竹刀袋が握られておりました。

立礼をして静かに坐し、心地良さそうに道場一杯の冷気にその心身をゆだねておりました。暫くして溢れだした涙は暫し止まる事は有りませんでした。その心中を察すれば(また道場に帰ってこれた)と言う喜び以外の何物でも有りませんでしょう。ただただ目頭が熱くなるばかりでありました。

手にして来た竹刀袋の中には燕飛伝授の証で有ります本琵琶の木刀が納まっておりました。その木刀を手にして心地良さそうに鏡に向かい、一人素振りをしておりました。趣くままの一人遣いを終えると得物を竹刀に変えて(基本稽古をお願いします)との申し出がありました。無論、出来るところまで受ける事としました。初太刀の正面打ちから又稽古出来る喜びが竹刀一杯に溢れておりました。何度か相掛けの拍子が間に合わずに、僅かに深く打ち込まれる事もありました。良く気のこもった打ちを繰り出しておりました。流石に順逆の前身後退の処で息が上がって仕舞いましたが、精根尽き果てるまでの基本稽古は心地よい物でありました。精根尽き果てるまで行う。剣の稽古は常にこう有りたいものであると今更ながらに感じ入りました。

兵法は無論、三学でありました。正直、本日は道場の空気に触れるだけでもと思っておりましたのでここまでの展開は驚きで有りました。裏返せばそれだけ今回の戦いは辛かったのでしょう。退院したら一日でも早く道場に出向き、稽古したい。その思いだけで辛い日々を戦い抜いて来たのでしょう。その思いの溢れた三学でありました。この一本を遣い終えて本日の稽古の終了としました。静かに座し、呼吸法を共有しながら・・・・・至福のひと時でありました。